Tsushimamire

Art Punk Rock Trio TsuShiMaMiRe from Tokyo, Japan

(日本語) 「LIVE IN GERMANY 2022」発売記念スペシャルインタビュー!

   


――今年2022年の6月から7月にかけて行なったヨーロッパ・ツアーは4年ぶりだったとのことですが、今までのツアーと違ったところは?
まり あたし的には“あぁ、これこれ……さいこー、生きててよかった”っていうのが感想(笑)。コロナ前に戻ったというか。(コロナの影響で)お客さんはだいぶ減ってるんですけど、誰もマスクしてないし、みんな抱き合うし、声を上げるし、ダイヴしても平気だし。普通にツアーして普通にライヴをして、“そうそう、これこれ!”みたいな。今までなんだったんだろうって、この何年間の鬱憤みたいなのが全部晴れるというか。はい、しあわせでしたー、自分を取り戻しましたー(笑)。


――まりさん的に、つしまみれ的には、ツアーをするのが普通の生活になってますからね。
まり そうですね。(今回のツアー前は)それすらも気づいてなくて。だんだんバンドがあまり活動しないのが普通に…。ライヴも(日本では観客が)声を出せないとか、外歩いてもマスクするとか、そういうのが普通になってたから、“あ、普通じゃない暮らし、してたんだ”ということにすら気づかなかったみたいな。でもツアー行って“こんな感じだったよね、人と人って”みたいな感じでした。
――ここ1~2年の間も日本ではライヴやってたんですよね。
まり 日本でやってたライヴは、心の中でどこか“(もしも分が無症状のコロナだったら)うつさないようにしなきゃ”とか。「おりぁ~!」とか言っても、“この線からこっち来ないで♪”みたいなのがありますよね、ライヴ・ハウスで。ステージから2メートル離れたところに線が引いてあったりとか。お客さんはマスクをして。あらゆる貼り紙とかで、学校の校則のように…。
やよい (観客が)立つ位置とかも決まってたりして、ライヴ・ハウスで。始まる時間も早くて、お酒を出さないところもあったし。日本でもほとんど東京でしかやってなくて、あとは配信ライヴが主だったから。(内外問わず)ツアーはほんと4年ぶりだった。
まり 遠征はしたけどね。すぐ帰ってきて。
まいこ 単発で、行って(すぐ)戻ってくるみたいな。
やよい それも数か所で。だからツアーした気分ではなかったですね。毎日のライヴがツアーだから(笑)。
まり あと向こうでライヴする時って、発散の仕方が、もうちょっと自由なんですね。日本でも“やっとライヴできる!”ってなった時には喜んでたけど、ちょっと遠慮してやってたなと、自然に。
やよい そりゃそうだよね、目の前の人が全員マスクしてて声も出せない状況で。
まり たまに「あ~~~!」とか言っても誰も何も言わない(笑)。
やよい マスクしてるから表情もわからない。目はキラキラしてるけど(笑)
まり やりづらかったんだーって。やれるだけでしあわせだったんですけど、どうしようもないんだけど、“この状況、腹立つわー!”ってなっちゃうぐらい、帰りたくないぐらいだった(笑)。
――話をちょっと戻すと、やよいさんとまいこさんは今回のツアー、今までと違ったと思ったところは?
やよい コロナの影響でお客さんが減っていて。何回も行っていていつもソールドアウトの所がそうならなかった…けれども最初に呼んでくれたスイスのフェスは今までよりも人が多かったと(笑)。ヘッドライナーだったんですけど、“待ってた感”がすごくて。ほんとうに“待ってたー!”って感じがすごくて。“待っててもらえるなんて、しあわせ!”って(笑)。今回そんなに多くは回れなくて小さなツアーだったんですけど、ヨーロッパ圏内の人は、わりと遠くからも飛行機で来てくれていて、それも嬉しいなーと思いました。あといつもと違うことと言えば、CDの時代が完全に終わってきてるんだ…と思いました(苦笑)。(ライヴ会場の物販で)売れない。ヨーロッパは本当にレコード/ヴァイナルに移行したんだって。日本はCDの方が多いけど、(ヨーロッパは)ダメだなって(笑)。

↑スイスのフェスのライブ後

まいこ ちょっとかぶっちゃうんですけど、“待ってた感”がだいぶあって。前からよく出てる所の“ホーム感”がすごい(笑)…“あ、ここここ!”みたいな懐かしさが。「待ってたよー!」ってブチュブチュほっぺを付けるみたいな(笑)。“迎えられてる感”があって。
――ロシアの隣国のポーランドが今回のツアーの最初のライヴになりましたが、他の国も含めてウクライナ情勢の影響などは感じました?
やよい ポーランドのフェスに(ウクライナからの)難民の方も出演されていたり。でも、ほんとポーランドの方々があたたかく受け入れているんだなって。心底状況はつらいけど、こうやって隣の国の人が受け入れてくれて生きていけて、他人なのに家族みたいな繋がりになっていて素晴らしいなと思って。そこはちょっと感動しました。
――目の当たりにしたわけですね。
まり アニメフェスみたいなのがあったんですけど、全員コスプレイヤーさん。すごいゴージャスなコスプレしてて、セクシーなのとか。で、その子たちと打ち上げして、そうしたら「私、ウクライナ。でもポーランドが第二の故郷なの」みたいな、和気あいあい。それが自然にいらっしゃる。たまたま話したのがその人だけど、他にもいっぱいいて、普通にそのアニメフェスを楽しんでるんだろうなーみたいな。(ウクライナとポーランドの人たちが)“慣れっこ”な感じもあったかな。ずっと不安定だったんですよね、ウクライナが。だから、すごく助け合いの精神が既にある感じで。日本の人とかには「難民がいっぱいいるから泥棒に気をつけろよ」とか物騒な話をされたんですけど、そんなんじゃないって感じ。行き場所が良かったのかもしれないけど、すごく平和な。
やよい 入国の時だけ(空港等で)ちょっと、暗い感じの…(気持ちが)沈んでる人が、やっぱりけっこういて。それがあまり今までにない感じがして。
まり 飛行機の所とか、そうだったのかもね。逃げてきたのかなみたいな方もいた。
――では、18枚目のアルバムになるライヴ盤『ライヴ・イン・ジャーマニー2022』の話に移ります。つしまみれらしい仕上がりになっていますね。
まり 行川さん、どう思うんだろうと。だいぶ音の作りが(つしまみれの今までのアルバムや一般的なライヴ盤と)違うと思うので。
――雰囲気がシリアスな感じの音でしたね。歌詞はともかく曲調がシリアスな曲が多いからかもしれませんが。それで、コロナはともかくウクライナの影響が…と勝手に解釈しました。緊張感が感じられました。張りつめているというか。
まり そうなんですね。単純に、ライヴ10本目でヒイヒイで張りつめていて極限だった、体力と精神が(笑)。
――各パートがよく聞こえて、分離が良くて。大きい会場でやって感じがよく出ている仕上がりですね。
まいこ ドラムも一段高いドラム台の上でした(笑)。
――お客さんの歓声とか後半しか聞こえてこないのは、演奏と歌以外のそういう音声が録れてない(拾えてない)から?
まり はい。ライン(録り)なので。歓声が聞こえないの、気になりますよね。
――観客の声出し禁止ライヴかなと思いました。で、後半はそれに我慢できなくなった観客が歓声を上げ始めたのかなと想像しました。異色のライヴ・アルバムという感じで、それもまた、つしまみれらしいです。で、実際のライヴでやった全曲をCDに収めてないのは、なぜですか。
やよい 単純に、(全曲入れると)長すぎた。もともとレコード(LP)に入れようとしてて、ついでにCDも作るみたいな(注:LPは音質的/物理的な理由で片面20分前後が一般的で、低音質を妥協しても片面30分ぐらいの収録が限界)。
まり あと、聴くにたえないものは自然と除外されていると思う(笑)。
まいこ “クリス・セレクション”。(録音とミックスを担当したクリスチャン・モックが)、たぶん、ライヴ聴いて良かった曲を選曲してくれて、それで10曲。新しい曲と、あと音源(スタジオ録音)ヴァージョンとライヴ・ヴァージョンでだいぶ違うようなやつとかを、選曲してくれて、それがすごいいいなーと思って。
――今回マスタリングを担当した中村宗一郎さんとスタジオで録ってきたここ数年の曲が、ライヴならではのアレンジとプレイで楽しめる…そこが聴きどころですね。“酒まみれ”なセットリストにピッタリの後半のMC、まりさんのiPhone録音をミックスした終盤のコール&レスポンスもポイント高いです。それにしても、ライヴだけではなくツアー全体がすごく忙しそうでしたが。今回のCDに付けられる特製ツアー・ブックを見て思いました(注:ライヴ・アルバムの初回盤に付いている計40ページの長方形フルカラー豪華本。メンバー3人それぞれが得意の“スキル”を活かして12ページずつ“旅行記”を担当。メンバーのサイン入り)。

↑「LIVE IN GERMANY2022」特典の特製ブックレット

まり はい。“飲むまで”がツアー行程に含まれているので、それも含めて忙しいなと。(ライヴが)終わったら早く飲まないと、って。ビールの確保と飲み場所の確保。あと昼間は絶対遊ばなきゃっていう(笑)。
やよい (急遽、エンジニアだけでなく今回ツアー・マネージャーも務めた)クリスがいたおかげで、めちゃくちゃ遊んだんですよ、今までにないぐらい(笑)。
――どういう遊びを?
まり 川で泳ぐとか(笑)。
やよい ライヴ前に泳ぐ人、いるかなーって(笑)。クリスはもともとアメリカ人で、アメリカ人の人ってよく泳ぐよなーって私思ってるんだけど。
――けっこう暖かい時期でした?
まいこ 外はメチャクチャ暑かったけど水温はメッチャ冷たくて。私は足しか浸けられなかった、無理。二人とも泳いでたけど、ちょっとマネできなかったりして(笑)。
まり 川で泳いで卓球やって、テーブルサッカーやって。
やよい あとトランプ(笑)。
まいこ おみやげも、がんばって、見つかるまで探すみたいな(笑)。観光もめっちゃしたし。(移動の)車以外の所に居る時間が、すごい長くて。今まで、それはなかったなーと思いました。楽しかったです。

↑ジュネーヴの川で泳ぐまり、やよい、ツアーマネージャー兼エンジニアのクリス

――何度もツアーやっているのに新たな発見があるのも、すごいです。
やよい ライヴ前にこんなに遊んでもライヴできるんだ、って思いました。今までは、ちょっと大人しくしていようとか、寝ようとか、体力回復しようとか、思ってたのに、全力で遊んで(笑)。
――タフですね。
まり タフだなと思いました。
――ライヴの日程も詰まっていましたし。“呑み”に関してですが、もちろんライヴ前はそんなにアルコールを飲まないですよね。
まり ライヴ前は飲まない。飲んでもできる人もいますけど、私はできない。声が出なくなるし、手が震えるので。
やよい 酔っぱらうので。1杯でも。失敗したなって思い出しかないから(笑)。昔は、たまに飲んでライヴもしてたんですけど、その時のライヴが良くないのがお酒飲んだせいだと気づいてからは、やめてます。
――プロフェッショナルですね。
まり フランス(のライヴ・ハウス)だと食事とワインがセットで。
まいこ ケータリングでワインが出てくる。食べ物がワインと合うようなものなので、がんばって耐えました(笑)。

↑ドイツでラストライブを終えた後の乾杯

――次に、同時期に配信で発表されるシングル2曲にについてうかがいます。まず「Look Back in Anger」ですが、曲のモチーフはSNSですかね。
まり いや、ハズレです(笑)。あれは、ほんとに、一人の人にすっごいむかついて。もちろん、みなさんが思うメッセージになればいいと思って、SNS(という解釈)でも、それはそれでいいと思います。わたくしが、すっごい腹立たしいことがあって。それをどう消化すればいいのか、わからないぐらい、むかついてたんですけど。私には歌があるじゃないか!と、歌詞に、したためまして。もともとメロディが浮かんでた曲があったんですけど、「あの作りかけの曲を、“堪忍袋の緒が切れた”(という歌詞)から始まる曲にしてもいいだろうか?」と(他のメンバーに)言ったら、「いいね」って。

↑『Look Back in Anger』アートワーク

まいこ 最初、絶対、甘い感じの恋愛の曲で、それはそれで良かったんですけど。
やよい もっと何かが欲しいなと思ってたところに、これだ!と思って。
まいこ すごい変わりましたよね。ニコニコしながら怒るみたいな(笑)。
――歌詞でSDGsを絡めたのも上手いなと。
まり 今っぽいですね。やっぱり再生可能エネルギーで、ものを無駄にしない。怒りの気持ちを無駄にせず、有効活用してます(笑)。
――ジョイ・ディヴィジョンの「ラヴ・ウィル・テア・アス・アパート」っぽい曲調で、やっぱりシリアスです。もう一曲、「SHOW YOU MY SOY SAUCE」。これは“つしまみれ節”というか。
まり はい(笑)。
――しゅうゆの魅力に気がついた、再認識した感じですかね。
まり “Show you my Soy Sauce”っていうワードを思いついて、“こぉれはもう名曲だー!”と思って。中村(宗一郎)さんと一緒にレコーディングするようになってから、(オリジナル・アルバムは)シンプルに向かって、無駄なもの、余計なものを排除排除、スッキリさせるカッコよさみたいな方向に向かっていたんですけど。それで色々やってきましたけど、(この曲はあえて)無駄なものがいっぱいくっついてるヘンなのを作りたいなと思って、それをかなえました。

↑『SHOW YOU MY SOY SAUCE』アートワーク

――楽曲的には色々なものが詰まっていて、つしまみれの原点のミクスチャーで、何でも入ってる感じですね。
まり はい。原点回帰だよね、ほんとに。
――レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンっぽいリフも入っていますし。ラップも。
まり ラップはやっぱり、つしまみれの(もともとの)特徴なんじゃないかと、言葉遊びが。
――ゲスト・ラッパーが入っているみたいな感じですが。
やよい (私が)ゲスト・ラッパーです(笑)。
――いや、ほんと、本物のラッパーに聞こえましたよ。笑えるけど、真面目にやっているところも、いいですね。
まり 自分たちで笑っちゃダメだと思って一生懸命やりました。
――笑えるけど、やっぱり批評性がありますし。真面目というか。
まり けっこう真面目ですよね。歌詞、気に入ってます。いい歌詞書けたなって思います。
――サビのメロディ、ヒット曲っぽいです。
まり はい、“売れ”にかかってます。
――でも、“えらいやっちゃ えらいやっちゃ ソイソイソイソイ”の部分で、聴いててひっくり返りそうな。やっちまった感が(笑)。それでも全部流れが自然になっているのがまた、すごいです。その2曲、クールな“ジャケット”も作られていますから7インチのレコードのシングルでも聴きたいですね。さて、ライヴ盤発売を記念した1~12月の国内ツアーを終えると年が変わりますので、来年の抱負をお願いします。
まり 再来年が25周年なので、そこに向けて盛り上げていく年にしたいなというのがあって。アメリカ行きたいなヨーロッパ行きたいなと思って。日本で売れたいなとか、日本じゃなくてもいいんだけど(笑)。あと抱負になるかわかんないですけど、カヴァー・アルバムを作っても面白いかなと。それで新しい人たちに聴いてもらえたないいなーと思って。みんなが何聴きたいかなと。歌謡曲もいいし、洋楽の名曲とかでも面白いだろうし、童謡とかもたぶん合うしとか、この前、色々(メンバーと)話して盛り上がりました。楽しみにしててください。